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2012/01/12

#006 続 COLNAGO MASTER PIU

ちょっと間が空いてしまったが、COLNAGO MASTER PIUで初クロモリフレームデビューを果たして、その時の予想外の感動的な体験をしたので、宣言していた通りインプレを。

まず乗って衝撃的でした。
この3年間で、身銭を切ってカーボンフレームにこれまで4台ほど乗ってきましたが、結論から言うと、いずれのフレームよりも正直言って良かったです。(RIDLEY/ORION、cervelo/R3、cannondele/six carbon、FOCUS/IZALCO)
良かった点をとにかく列挙すると、


1、乗り心地がいい。
このコルナゴのマスターは、元々80年代にレースで本気で勝つために作っていたフレームなので、クロモリフレームの中でもレーシーで硬い部類に入るんだと思うのですが、それでも路面から伝わる振動に対する吸収性があって、乗り心地が良かったんで予想外のことに驚きました。実感としては、レース用高級カーボンフレームと同じぐらいの振動吸収性はあります。これは想像ですが、同じコルナゴでも、マスターじゃなくてSLチューブのスーパーとかだったら、もっと乗り心地がいいんじゃないかと思われます。

2、安定して速く走れる。
これだけだとクロモリは重いから安定してる分、速く走れるという風に取られそうですが、それだけではなくて、フレームが細いおかげで、今の極太でマッチョなカーボンフレームに比べて、空気抵抗による影響をほとんど感じません。逆にカーボンフレームのときは空気抵抗をずいぶん受けていたんだなと後から気付かされたのですが、風によるロスが無いためか、結構速く走れているような気がします。
あと「安定して」というのは、縦風だけでなく、当然横風の影響も受けないので、ハンドルを取られるような感覚が無いからですね。

3、とにかく楽。
一度スピードにノってしまえば、1、2の理由からかなり楽な感じで走れますし、重さもほとんど気になりません。スピードの維持も軽量なロードバイクに比べ慣性が働く分、楽な気がします。重さに関しては、峠とかにまだ行けてないので何とも言えませんが、都内のちょっとした坂を走った感じだと、あまり気になりませんでした。

あと細かいことを言えば、

4、トラクションの掛かりがいい
これは友人からの受け売りですが、カーボンの特性として縦に良く跳ねてしまうため、路面から受ける影響が大きく、クロモリに比べて、路面に対するトラクションの効きが安定していない気がします。特に路面状況が良くないところでは差が顕著で、縦の弾みはハンドリングや姿勢維持にも影響をするため、カーボンフレームは走行も難しくなっている気がします。


クロモリフレーム唯一の欠点は、全力でスプリントを掛けると、硬いレース用カーボンフレームに比べ反応がゆったりしているためか、前に進んで行かないような感覚が強いです。サイコンをまだ取り付けてきちんと測った訳ではないので、あくまで想像ですが、たぶん実際にもスピードが出てない気がします。
ただ、スプリントなんて全くしない僕にはこの点は全然問題にならないです。

細かく補足をすれば、1の理由ついては、欧州の舗装路があまり無かった時代から乗られているという歴史的な背景が関係している気がします。ツールやジロなどのレースで舗装された状態のいい道を走るようになったのは、きっとここ30年くらいなんじゃないかと思うんですが、もっともっと前の時代から走っていたことからすると、むしろ舗装が良くない時代を走っていた時間の方が多いはずです。それに日本と違って、いまだに石畳とか、あちこち未舗装の道が残っていることを考えると、必然的に悪路で走っても問題ない性能がないといけなかったのではないかなと思います。悪路に対してのクロモリフレームの耐性は、必要最低限の機能だったと考えれば納得がいきます。

それに対してカーボンフレームは、遡ってもせいぜい20年ぐらいしか歴史が無いので、舗装されたいい道を走る前提で作られているため、自然とアスファルトの平らでグリップの効く路面に合わせて作られており、振動に対する処理能力、快適性の許容範囲がそもそもクロモリと絶対的に違うんだと思います。実際乗ってそういう根本的な差というか、成り立ちの違いみたいなものを肌で感じます。

(※ここで一つ留意点がありますが、最新のクロモリバイクはまた別物だということです。実際に自分で体感した話ではないのですが、今のクロモリフレームに使われているスチールは、軽量で高剛性にするための創意が加えられているため、全く違う乗り味と聞きます。目指しているベクトル方向が同じなためか、カーボンフレームに近い感触のようです。溶接の技術や、ジオメトリーの違いなどの影響もあると思いますが、仮に同じブランドの同じ名前のフレームでもビンテージと現在のフレームだと違うようです。)


ざっと並べると以上ですが、結果的にカーボンフレームの必要性を全く感じなくなってしまいました。これまでカーボンフレームに結構な金額の私財を投じてきているので、とても残念でならないのですが、フレームとしての成熟度や完成度が最新の軽量カーボンフレームより、古く重量のあるクロモリフレームの方が決定的に高いと感じてしまったのが大きな要因です。
それを生み出しているのは、鉄という素材特性や重量、ジオメトリー、パーツの組み合わせ等、色々あると思いますが、多くの要因が組み合わさって生まれる走行感は本当に素晴らしい。Sレコというビンテージパーツを使用しているため、機能的に劣る部分はもちろんありますが、フレームの持つポテンシャルが高いことは間違いないと思います。
もっと乗ってみるとまた違う世界が見えてくるのかも知れないけれど、またそれを思うと楽しみで仕方がない。

次に気になる関心事としては、クロモリフレームに最新のパーツを付け、機能的に優れた状態にしたときに、フレームがどんな反応を示すかですね。また1年ぐらい時間を掛けて、ビンテージクロモリのフレームを手に入れて、自分のデザインでカラーリングを施して、最新コンポを付けた古くて新しいクロモリバイクを作りたいと思います。カラーリングデザインの草案はもうほぼ出来上がっているし、コンポは今IZALCOに付いているものを流用すれば、大半のものが揃うので、ベースになる新たなフレーム探しが当面の仕事となりそうだ。

クロモリにますます惹かれそうだ。

2011/12/26

#005 COLNAGO MASTER PIU

Sレコ仕様のCOLNAGO MASTER PIU。



この一年ほとんどロードバイクに振れることが出来なかったけど、購入したまま放ったらかしになっていたCOLNAGOのMASTER PIUというクロモリフレームをとうとう組んだ。フレームは1988年頃のモノのようで、コンポーネントも含めたビンテージクロモリが1台どうしても欲しくて買ったものだった。
「PIU」という名前が付いてることで、他のMASTERモデルと何が違うのかが良くわからないところが残念なのだけど、ジルコデザインの潰し入ったチューブで組まれている点は他のMASTERと同じ。
塗装が変わっていて、ラメ入りの黒地にシャンパンゴールドのロゴが入っている。COLNAGOは同じモデルでも塗装のバリエーションが飛び抜けて多くて、見たことないような塗装のものがいろんなところで見れるからから面白い。大概は派手でなかなか手がでないけども、こういう趣向がちょっと変わったものがあったりする。ちなみに同じカラーリングのフレームはネット上でもまだ1台しか見たこと無い。
フレーム状態としては一部塗装が剥げていたり、若干の錆がある以外は、クローム塗装の状態もそこそこ悪くなく、ベースのダークなカラーに助けられて汚れもほとんど目立たない。全体的にいい状態で満足出来るレベルだった。
ただ、輸送中にエンドに何かしらの加重が掛かったようで、曲がってしまっていたこと以外は。
(そのことは機会があれば、どこかで投稿したい。)

コンポは、カンパニョーロのスーパーレコード。フレームの年代的に言えば当然コルサレコードで組むのが妥当なのだと分かってはいたのだけど、その時、Sレコのデザインが好きだったことで決めてしまった。(今はCレコのコンポも1セット持っている。)
あとはビンテージバイクに惹かれるようになって色々昔のレースに想いを巡らしていると、昔のレースコンポがどういう作りというか、どの程度の機能を持っていたのか興味が湧いていたため古さも多少重要だった。
大半はいわゆるSレコのパーツだけども、チェーンリングはコルナゴのロゴが入ったゴシック調のゴツいデザインのモノを使用。ここまで主張しなくてもと思うけど、コルナゴのフレームでしか付けられないということもあって、これを選択。
歯数は52/42というコンパクト全盛期の今からすると考えられないようなバカデカイチェーンリング。
PCDが144mmとそもそものクランクサイズが大きいので物理的にコンパクト化できないので仕方ないけれど、ちょっと乗るのに覚悟がいる。
Sレコも大別すれば、初期/後期と色々あるみたいだけども、そこはまだ勉強中であまり良くわかっていないのであしからず。

ステムはチネリのピノキオ(90mm?)、ハンドルもチネリのハンドル、これに関しては残念ながらモデル名が良くわからない。
スレッドステムは10本ぐらい持っているのだけど、その中からオーディションして、クロームの仕上げがフロントフォークのクロームと合うということで採用。ピノキオというのは愛称で、見た目通りヘッド部分に赤いボルトが付いているからとのこと。




シートポストもカンパSレコで、これも結構デコラティブでクラシックな形状。デザイン的には優れているが、縦に溝が入っているのは、軽量化のためなのか、剛性を出すためなのかは不明。素材はアルミ。

サドルはSELLA SAN MARCOの復刻コンコールのブラック。ロールスとかレーザーとかいくつかあるクラシックサドルの中で最も自分のお尻の形に合いそうだと予想して採用。サドルバックがカールして競り上がってるところが特徴的で、有機的な形状がとても美しいサドルだ。
見た目の丸さと違ってサドル自体は表面的なクッション性がほとんどなく結構硬いが、身体との接地面積が広いため硬さも気にならない。
(サドルに関しては別の機会に記事にしようと思っているのだけど、思いのほか良くて驚いた。嬉しい発見。)









ペダルだけは良いものが見つからず、MKSのシルバーのペダルが付いている。ここはトゥークリップ含めてそのうちバージョンアップさせるつもりなので、とりあえず気にしない。
ペダルは消耗品だから良いものが残っていないのか、数が少ない上、金額もかなり高価で困る。状態が良いと2〜3万円ぐらいするからなかなか手が出ない。
お洒落は足下からということあり、妥協せずいい出物を気長に探すしか無い。


ブレーキもSレコだけど、パッドだけはカンパから出ているビンテージコンポ用の新しいパッドに交換。ブレーキの効きは、走行の上で一番生き死に関わる部分なので迷わず交換した。それにしてもカンパはいまだに30、40年も前のコンポ用のブレーキパッドを作っているからアフターケアの深さに恐れ入る。
ただ、高い。
実際の効きは、古く硬くなったパッドに比べたらかなりいいが、今のブレーキアーチ&パッドとは比較対象にすらならないくらい別物。あとはフィジカルとテクニックで何とかするしかないと覚悟する以外どうしようも無い。



ホイールはMAVICのOR10(通称オロ10)というシャンパンゴールドのチューブラーリム(32H)に、Sレコのハブ、スポークはSAPIMでこれだけ現代パーツを使用。フレームのゴールドロゴに合わせてチョイスしたビンテージリムだけど、もちろん手組で、パッと見はピンテージ感のあるホイール。
しかしSAPIMのスポークのおかげで、軽量で丈夫で信頼性のある仕上がりなっていて、オロの重量も380g前後と、今のWOリムに比べても軽量だということもあって意外と軽い。
スプロケットの重さがあるので、後輪は結局は重くなってしまうけど。)
昔のハブということもあって回転性も期待していなかったけれど、今のベアリングと比べても不満無く良く回るので驚く。手組で組んでくれた方が、良くメンテナンスして組んでくれたことも影響していると思う。腕の良さに感謝。
タイヤはサイドケーシングがゴールドで見た目的に採用したヴィットリアのラリーなので、スゴくいいタイヤではないので、衝撃吸収性もたいして良くはないかもしれないけれど、しっかりしたタイヤで信頼出来るし、街乗りで走るには合ってると思う。
ホイールと合わせた乗り心地は軽快でとてもいい。カラダが大きく体重がある僕が乗っても、腰くだけるような感触もないし、坂でダンシングしてフロントに重量掛けても問題ない。
美しいだけでなく機能的に見ても何も問題がなくて本当に素晴らしい。


スプロケはREGINAのAMERICA 1992の13/23の7枚仕様で、こちらも平地番長的な歯数。重量は流石の重さだけれど、ボスフリーのスプロケの中では軽量な部類に入るそう。
ここも勉強不足で残念ながら詳しくはわからないけど、デットストックだったこともあり、使用に問題は全く無し。









時間が無くなってきたので、急ぎ足で紹介したけれど、簡単な仕様はこんな感じ。フレームを一から組んで見てみて思うのは、ビンテージバイクには、今のカーボンバイクには無い何とも言えない味わいがあっていい。今のカーボンの流線的なデザインも好きだけども、細いクロモリのフレームとパーツからは当時最先端の知恵やデザインが施されているので、時間が経った今眺めても全く色褪せない別の魅力がある。いい歳した大人がビンテージクロモリの世界に引き込まれる気持ちが良くわかった。乗って良し、眺めて良し。クロモリ眺めるだけで酒が進むと回りから言われていたが、その気持ちもわかった。本当にとてもいい。

ちなみに、「乗って良し」のこのフレームのインプレはこの次の機会に。初のクロモリライドはとても衝撃的だったので必ず記事にしたいと思う。
ここまでご拝読ありがとうございます。





2011/04/26

#004 Prologo NAGO EVO TTR NACK

先日ebayで購入して、今日手元に届いたサドル、Prologo NAGO EVO TTR NACK。

この冬に仕事が忙しくて、ロードバイクに乗れずにいたら体型が変わってしまい、それまで使っていたSMP Strike Compositeがお尻に完全に合わなくなってしまったために購入。
元々、前乗りが好きな自分にとって、この前乗り前提のタイムトライアル用サドルは以前からかなり気になっていた。
SMPも使い心地はもちろんのこと、「速く走ろうぜ!」と言わんばかりの攻撃的な形状のデザインが特に気に入っていて、いいサドルだと思って満足していたけれど、体重の増加とともに、あちこちに痛みが出るようになってしまった。
サドル選びはホントに難しい....と思いながらも、新たなサドル探しの旅に出るいい口実が見つかって、嬉しかったりもする。

ということで購入したサドルだけど、いきなり本命を購入してしまった。
先に書いたようにこのサドルはTT仕様のサドルとなっていて、TTのワールドチャンピオン/ファビアン・カンチェラーラとPrologoが開発し、実際このサドルを使用して好成績を去年まで残していた。(※所属チームが変わった今年からは使用していない可能性が高い。)

名前から類推するに、NAGOという製品をベースにデザインされたようだけど、大きな特徴はサドル先端に集中している。ノーマルのNAGOに比べると先端部分の上面の形状が平らになっていて、そこにラバーのようなゴムのような質感の滑り止めが付いている。
これは前乗りした時にどうしてもサドル先端部に座るカタチになるので、なるべく広い面積で股を支えて一点にかかる力を分散させようとしているのと、お尻が滑ってパワーがロスするのを防ぐのを狙っていると思われる。
(余談だが、コンタドールがツールドフランスのTTステージの時に、サドルの上でお尻が滑っているのをよく目撃したが、あれはパワーロスになっていないんだろうかと不思議だった。その後試しにマネしてみて気付いたことだが、コンタドールは同じリズムに乗って後から前に滑らせていたので、もしかしたらサドル上で移動しながら微妙に足の使っている筋肉を変えるというテクなのではと思った。実際そういう効果が得られて楽なんだけど、一定のリズムに乗って規則正しくやるのはかなり難しい。)

あとは先端を若干カットしてショートリーチになっている点が特徴的。
ショートリーチになっているのは、UCIの規定で、BBの中心から5cm以上後方にサドルの突端がこないといけないという決まりがあるために、可能な限りサドルを前に出せるように必要の無い部分はカットしてある。

つまり前乗りした時に、都合が良くなるような工夫が凝らされてる印象で、実際、前乗り派としてはかなり有り難い仕様になっている。

ということで期待して試してみた訳だけど、実際にかなりいい感触が得られた
正直、すばらしい!
今まで前乗りをしていて不満に思っていた部分がほぼ解消されている。
どの場所に座っても安定してペダリングできるようになっている。
尿道の圧迫問題はあるので、長時間は難しい部分はあるけど、慣れで長い時間もいける可能性を感じた。

座面後方は、NAGOそのものの座り心地。
フラットな状態より軽く上下にカーブしているが、強烈にホールドするタイプではないので、多少自分で調整して座ることができるので、ロングライドも問題ないと思う。

欠点というか気になった部分としては、サドル先端部分の幅が結構広いので、体が大きい上に外股気味にペダリングする癖がある自分には全く問題なかったけど、体が小さい人や内股気味にペダリングする人には合わないかもしれない。
ただそれも身長186cmもあるカンチェラーラ基準で作っていると考えると納得いく部分ではある。

あと基本的なところとしては、クッションは固めだけど厚さは結構ある。張りがあるというか。
NACKver.はレールがカーボンなので、サドル重量が183gと特に軽い。
肉厚のしっかりした外観から受ける印象と重さは反比例している。

まったく期待していなかった効果としては、サドルが軽くなったおかげによって、ダンシングでハンドルを左右に振った時、腕に掛かるバイクの重みが軽くなって楽になったこととのと、バイクの重心が下がったことで、コーナーを曲がり易くなったこと。
数字的には小さな差かもしれないけど、体感的には結構変わった感触が得られて面白い。

最後になってしまったけど、サドルデザインもこのブラック/レッドのタイプはかなりクールでいいと思う。
一見大人しいデザインに見えるけど、よく見ると黒でロゴが大きく入っていたりしていて、黒と黒を掛け合わせているところや、サドル裏側がレーシーな赤になっていたり、配色へ気の使い方がうまくて良いバランスだと思う。

機能はもちろんのこと、開発の経緯も含めてかなり良いサドルだと思う。